て つ こ ら む
〜うえさんの鉄道コラム〜
3、「房総の夏2009」 2009年7月25日(土)
1990年代初め、
JR各社はカラフルで斬新な新型特急電車や
ステンレスの新型通勤電車・近郊電車を続々登場させ、
多くの国鉄型車輌を置き換えていきました。
また、国鉄型車輌の中でも比較的新しい車輌は、
新型車輌にあわせてリニューアル改造や塗装変更などで
装いを一新させていきました。
そんな中、
房総地区のJR各線は
国鉄型の特急電車183系と近郊型電車113系を使用、
内装も外部塗装も国鉄時代のままの姿で運行されていました。
蘇我から京葉線が乗り入れてくる内房線・外房線には
ステンレスの205系が走りますが、
それも君津や勝浦くらいまでで
そのほかは国鉄型の独壇場。
冷房付電車が当たり前の時代にもかかわらず
113系などは非冷房の初期型車も数多く残り
夏場に窓を全開にして房総の海風を浴びながら
缶ビール片手に
汗だくで旅をする楽しさ!?もまだ残されていました。
特急電車は183系。
「あずさ」用にリニューアルされた車両などもありましたが
立ち上がるとリクライニングシートがバタバタ動く
古い0番台の車両も多く
一般乗客の視点で見れば
時代にそぐわないととられても仕方ない存在ながら
鉄道好きには国鉄時代を懐かしむことの出来る貴重な存在でした。
1993年7月2日には255系新型特急電車9両編成2本が
内房線「ビューさざなみ」外房線「ビューわかしお」でデビュー。
数年後には更に9両編成3本計5本で特急運用に着きました。
それでも183系特急電車や113系がまだまだ主力で、
しかも塗装も国鉄時代のまま。
「国鉄型車輌の楽園」などと称され
房総のJR各線は「国鉄ファン」にとっての
憧れと郷愁に満ちた路線となりました。
久留里線のキハ30、37、38なども含め
房総の鉄道がファンの間で注目され始めたのもその頃です。
そんな房総地区にもJR新型電車による、
国鉄型電車撤退の波が
徐々に迫ってきます。
最初の大きな波は
総武快速線から乗り入れてくる快速電車でした。
1994年12月3日
横須賀線・総武快速線にE217系電車が登場。
同線の「スカ色」113系電車をじわじわと置き換えていきます。
快速から撤退した113系は廃車された車輌もありましたが、
多くがそのまま房総地区に残り古い113系を置き換え、
また、湘南色に塗り替えられて
東海道本線の古い113系の置き換えに使われました。
房総地区の普通列車で見れば
113系を113系で置き換えただけで
あまり変化はなかったのですが、
乗り入れてくる快速電車が徐々に113系の11・15両編成から
E217系の11・15両編成に変わっていきました。
快速電車の置き換えは1999年に完了。
この時点で千葉以西の総武快速線では
幕張電車区へ出入りする回送電車と新聞輸送電車以外、
113系は見られなくなりました。
房総から話がそれますが
中央・総武緩行線(いわゆる黄色い総武線各駅停車)では
103系電車が老朽化したため
2000年にE231系電車を運行開始。
1年ほどで総武線から
103系、201系、205系を追い出してしまいました。
209系500番台とE231系が出揃った頃の総武線は、
日本で一番最新式の電車ばかりが走る路線と
なってしまったのです。
国鉄時代から「他線のお古」が廻ってくることの多かった
総武線にとっては、前例のない待遇でした。
房総の電車のJR新型車輌化の次なる標的は
「特急形電車」です。
この頃になると館山自動車道が木更津まで開通
館山への延伸が進んでおりました。
一方で東京湾横断道路(東京湾アクアライン)が開通。
南房総へ向かう特急電車のサービスアップが図られたのです。
2004年10月16日には特急形電車E257系500番台が
「さざなみ」「わかしお」で登場。
前日限りで内房線、外房線特急から
183系(転属で189系も編成に組み込まれていた)が撤退しました。
255系に続いてE257系と
新型車両を南房総に集中させたのは
おそらく「高速道路対策」だったのでしょう。
E257系500番台は5両編成19本が出揃い、
2005年12月10日からはE257系が
総武本線、成田線にも進出、
その前日を以って
房総特急の定期便から183・189系が完全撤退しました。
(代走やイベントなどで183・189系が走ることは
その後も何度かありました)
房総特急から国鉄型が消えた瞬間でした。
快速、特急と進んできたJR新型電車化の波、
次なる標的は普通電車の113系となります。
2006年3月には 伝統の東海道本線「湘南電車」から
113系「湘南色」が完全撤退。
多くの車輌が廃車され、
または4両、6両編成に組み替えられた後
「スカ色」に塗り替えられ房総に転属。
房総の古い113系を置き換えました。
総武快速線の時と同じようにここでも
比較的新しい113系によって
古い113系を置き換える手法が行なわれました。
しかし流石の113系も老朽化の波には勝てません。
同年10月21日からは
高崎から転属した211系が房総の普通列車で運行を開始。
とうとう他形式の車輌による置き換えが始まったのです。
この置き換えで113系のうち製造初期のものが完全撤退しました。
211系3000番台は5両編成14本が段階的に投入され、
余剰となった113系は6両編成を中心に
一部編成を差し替えるなどして廃車されていきます。
2009年6月現在
幕張車両センターに残る113系は
6両編成
クハ111+モハ113+112+モハ113+112+クハ111 の
S61〜71、51、53編成の13本 78両
4両編成
クハ111+モハ113+112+クハ111 の
S101〜119、201〜218、221〜225編成の42本 168両
訓練車1編成 4両
合計250両在籍
総武快速線に113系が走っていた頃と比べると
半数以下になってしまいました。
そんな折の 2009(平成21)年6月
JR千葉支社から
リバイバルトレインの発表がなされました。
JR千葉支社によりますと
この度6月25日より
113系4両が湘南色で走り始めるそうです。
また 久留里線キハ30の1両が7月4日より
国鉄色(クリームと朱色のツートーン)で
運転されるそうです
詳細は 下記アドレス
http://www.jrchiba.jp/news/pdf/20090619shounan.pdf
113系の一部車両を
懐かしい湘南電車の色にするのは
懐かしさもあり嬉しい限りですが、
見方を変えればこれは「113系終焉」
に向けてのイベント。
国鉄型、特に国鉄近郊型電車113系を
こよなく愛するファンにとっては
複雑な心境です。
本日、仕事の行き帰りに千葉駅、本千葉駅で
113系を撮影しました。
時折211系が来るものの普通列車は113系ばかり。
MT54モーターの音、コンプレッサーの音など
いつもと変わらず行き来する113系を見ながら
「この風景もまもなく過去のものになるのか・・・」と
113系のテールランプをいつまでも
目で追ってしまう私でした。
追伸
6月25日 予定通り湘南色4両編成1本がが登場。
元々湘南色だった2000番台の編成でした。
その後8月頃には6両編成1本も登場。
こちらは元来横須賀総武快速線の1000番台であったのは
仲間うちから賛否両論ありました。
10月24日(土)と翌25日(日)には
湘南色4両+スカ色4両計8両編成で
東海道本線、横須賀線を走るイベントも行なわれました。
一方で10月1日からは
元京浜東北線の209系が房総転用改造を受け、
房総各線で運行を開始しました。
2011年まで209系の転用改造を続け、順次幕張へ配置、
113系を沙汰していく予定とのことで
国鉄型電車最後の楽園が過去のものになるのは時間の問題。
今のうちに出来るだけ画像や映像に残しておこうと思います。
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